産業

伐った竹を売ることは、実は難しい

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放置竹林整備に勤しむ人は意外なほど世の中に多いです。ボランティアという形が主で、もしかすると地域の予算や補助金がついているかもしれません。家の裏庭(裏山)に竹林があり、それが荒れているので整備をしようする人もいます。畑がイノシシなどに荒らされるので、その隠れ家をつぶす目的で竹林を整備する(=隠れられないようにする)という場合もよく聞きます。

その時に誰しもが思うのが、「結構よさそうな竹がたくさん切れた。これって売れるんじゃないの?」ということです。誰しも思います。木が売れるなら竹だって、という発想です。

しかし、その99%が残念ながら諦めることになります。その理由を本稿では解説します。

【そもそも売っていいのか?】

自分の敷地内で伐った竹は、もちろん売ってよいです。しかし、他人の家の敷地であったり、また公の土地の整備を受託(市や都道府県など)で伐ったものを売ってよいかどうかは、契約書を読み直す必要があります。友人間の整備の請負でも、「その伐った竹は土地の所有者である私のものだ」と言われると話がこじれるのは容易に想像ができるでしょう。

ましてや、公の土地である場合はなおさらです。「整備」を請け負っているあなた(あるいは、あなたの所属するグループ)が、その土地から出たものを勝手に販売してよい、ということになっている契約は極めて稀です。そしてもし「売っていいよ」という契約の場合は、筍を売った方が遥かに利益を得られることは自明です。

いずれにせよ、「売っていいかどうか」は意外にシビアな話なので、まずは契約書の確認と交渉が必要です。このハードルはそれほど高くないかもしれません。なお、補助金などを受け取っている場合は、その要件に「営利活動はしないこと。その場合は補助を打ち切る」などの文言が書かれている場合もあるため、そのあたりも注意が必要です。

【誰にどうやって売ればいいのか?】

ご自身で加工(板材やパウダー、竹炭などに)する場合を除いて、販売の方法は大きく3つあります。

まず一つは「竹材屋さん」に納品するパターン。しかしこれはその竹材問屋との人脈や繋がりが無い限り、ほとんどあり得ない話です。かなりハードルが高いと理解いただけますと幸いです。

あり得るのは、その地域にあるかもしれない「竹を回収している」業者に持ち込む(あるいは引き取ってもらう)パターン。こういった業者は竹をなんらかの手法で大量に捌く先(=卸先)を持っているので、大量に持ち込むならこの業者を活用するのがベストでしょう。特にそれまで繋がりがなくとも扱ってくれます。古紙の回収業者をイメージしていただければ、それに近いですね。ただし、一部の市町村でしか実施していないため、それに該当しない地域ではこの手法は使えません。遠路はるばる竹を運ぶのは、お察しの通りコストに見合わないので。

最後に、最近は「メルカリ」などのC2C(コンシューマー to コンシューマー)で捌く方法も時々見られます。メルカリなどではトイレットペーパーの芯や牛乳パックなども取引されているほど(子供の工作に使うそうです)なので、事実上なんでも売れます。但し、量を捌くのが難しいのが難点です。

【売ることにより利益が出るのか?】

結論から言うと、ほぼ出ません。なぜなら、取引単価がとても安いことと、多少取引単価が高い場合は「竹に求められる要件」が厳しいことが挙げられます。ここでは、主な売り先となる「竹の回収している業者に持ち込む」パターンについて解説します。上述の通り、竹材問屋に卸すのは見た目や信用の問題でなかなかハードルが高く(その問屋が扱う竹は、おおよそ「竹材向け」に生産された竹です。少なくとも放置竹林でないことが多いです)、またメルカリなどは独自の交渉手法が発達しているかつ、これも前述の通り量が捌けないのでここでの言及は控えます。

まず竹はおおよそ、4~10円/kgで取引されます。おおよそ竹は(時期にもよりますが)モウソウチク一本あたり50キロ前後でしょうか(枝葉を含む)。その場合、ざっくり1本のモウソウチクが300円前後という価格になりそうです。これだけ見ると、「なんとなく儲かるかも?」と思うかもしれませんが、実際そんなことはありません。

作業量をイメージしてみましょう。まず、竹藪に行く。これだけでも結構時間がかかります。そして竹を伐る。この作業は簡単かもしれません。しかし玉切りにする、枝葉を払う、山から搬出する、そしてトラックに積み込む、そして運搬する……という膨大な作業が出荷までにはかかります。おおよそ、玉切りから枝葉を払う、そして搬出・積み込み作業までで、チェーンソーを用いて(相当早いですが)1本あたり20分くらいを見込みましょうか。その時点で時給は900円程度になります。

ちなみに、上記の作業はほぼ必須です。まれに「どんな竹でも回収する」という業者もいますが、大概は以下のように条件を設定しています。また、引き取りに来てくれる業者もいますが、その場合は当然買い取り金額は減少します(半分くらいになります)。

例えば、竹の買い取りを行っているNPO法人淡路島環境整備機構の場合、以下のような要件で購入しています。なお、竹チップ工場への持ち込み価格は3,000円/軽トラ一台分(=350kg程度)となっております。

・直径が5㎝以上の『孟宗竹』に限ります。真竹、破竹、枯れた竹、腐った竹、枝・葉は収集できません。
・玉切りする長さは、2mにしてください。2m以下の竹は収集できません。
・竹の伐採・積込・運搬作業は、安全確保に努めてください。特に竹の運搬はロープで固定するなど落下防止を行ってください。

また、株式会社国元商会では以下の要件で買い取りを行っています。なお、買い取り価格は姶良市の竹林:9.3円/kg(姶良市以外:7.8円/kg)となっています。

・竹の種類:孟宗竹
・2年生以上(目安:節が黒いもの)
・直径5cm以上
・長さは①2.3m ②2.5m ③3.0m のいずれかに揃えてください。
・生竹か立ち枯れの竹に限ります。石や土などの異物は取り除いてください。
・曲がっていたり、断面が楕円状のものなどは問題ありません。

上記のように、「枝葉は落とす」「若すぎる/枯れた竹は避ける」「玉切りする」「一定の直径が必要」というのは、ほとんどの業者で必須な条件になっています。これがなかなかに作業量として重く、また竹材の選別も発生するので厄介なのです。特に、放置竹林は枯れた竹が多く、そしてその販売はできないというのが実態です。また、先端に近ければ近いほど細くなるので、一本の竹からもいらない部分が発生したりします。

【まとめ】

上記の通り、素人が仕事にするほど(=最低時給を上回るほど)次々に竹を伐り出して売る、というのは難しいというのがご理解いただけたでしょう。作業にこなれてかつ効率の良い竹林(=稈齢が管理されており、また搬出もしやすい)でないとなかなか難しいのです。ただし、チャレンジすることは悪くはなく、また慣れてくればそれなりの対価も得られます。副業的に実施するのは悪くない選択肢かもしれません。

買取価格がもっと上がれば……と思う方もいらっしゃるかと思いますが、地域・地場の買取業者様には「地域のためを思って(=山を荒らしてはいけない)」ということで、赤字覚悟・慈善事業に近い位置づけで買取を実施されている方もいらっしゃいます。
業者様も工夫を凝らして買取した竹を加工して販売していらっしゃいます。その加工品が普及すれば、高価格かつ恒常的な買取が維持できる可能性は上がりますので、消費者でもある我々は積極的に竹加工品を利用してもよいかもしれません。

【参考文献】

・竹を収集します(NPO法人淡路島環境整備機構:URL
・株式会社国元商会HP(URL)(2023年1月17日更新)

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コメント

  1. タケダ より:

    初めまして、竹の山を所有しているのですが、間引いた竹の処理に困って調べていた所、たどり着きました

    お伺いしたいのですが、
    腐敗した竹を粉砕器などにかけ、畑の肥料などにし
    販売するなども可能でしょうか?
    また事例などはございますでしょうか

    1. 竹サロン運営 より:

      お世話になっております。
      腐敗した竹をチップなどにして販売する事例は見たことはありません。
      なぜなら、腐敗した竹の効果効能が検証された例はほぼないことと、腐敗した竹をあえて販売する理由がないからです。
      (工業的には、毎年生えてくる竹を適切に管理してチップ化して販売するので、腐敗した竹を使う必要がありません)
      竹林整備の際に発生する腐敗した竹は、そのまま放置(あるいは穴を掘って埋める)して竹林に還流させることが多いです。

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