文化

幻の竹酒ウランジの正体

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ウランジ

竹関係者なら一度は飲みたいと思っている幻の酒がウランジ(Uranzi)です。

(Ulanzi: The miracle drink of Tanzaniaより)

その正体は、タンザニア南部だけで飲まれている、竹の樹液を自然発酵させたお酒です。日本の飲料メーカーが販売を試みたこともあるそうですが、断念したという噂もあります。

タケを自然発酵させたお酒であるウランジは、味はまっこりに似ているとも、カルピスに似ているとも言われますが個人で醸造している場合が多く、それぞれ味が大きく異なると予想されます。

現地では多くの家が竹林を有しており、1月から7月のあいだ(主生産地であるタンザニア南部の雨季の12月半ばころから6月)のウランジの季節は、お茶代わりにして飲むこともあるそう。製造方法は、雨季に竹(2年目の竹の子が主らしい)の頂部を2〜3センチメートルの所で切り取り、その後毎日盛り上がってくる部分を切り取っていくと、白い泡状の樹液が流れ出るのでそれを集めるが、それは既に発酵しているとのこと。タンザニアでは、ウランジ採集を目的として竹(O. abyssinica )が盛んに栽培されており、人びとの重要な現金収入源となっているそうです(ウランジ酒の価格はビールの1/5程度)。なお、原料の竹もウランジと呼ばれているそう。

さて、その味についてですが実際に私が飲む機会がないので色々探したところ、以下のような情報が確認できました。

・青っぽいさわやかな風味で、口の中でかすかに炭酸がはじけ、またさっぱりとした後味
・味はただのまっこりに近く、酸味と甘みが混ざり合った味わいで、変なエグミも臭みもない
・口に含むとやわらかく爽やかな甘さがある。ちょっと酸っぱいのが玉にキズ(発酵が進むと飲めたものではない)

なお、現地に飛んだ方のブログを拝見していると、生産地の中でもウジョンベが「ウランジ生産地域のなかでも標高が高く気温が低いため、雑菌の繁殖が抑えられて、アルコール発酵と乳酸発酵が絶妙なバランスで進む」とされているそうです(逆に前述の通り発酵が進みすぎると飲めたものではないためおいしいウランジは現地のその時期に飲むしかない、とのこと)

そう考えると、商品化への道は険しいでしょう。前述の通り、噂によると某乳酸飲料会社などが商品化を狙っていたらしいですが、アフリカの奥地でしか入手できないということもあり断念したらしいです。実際のところ、菌と竹だけ持ち帰れば温度・湿度を調節して容易に発酵させて安定した採取が可能だとは思いますが、そうしなかった理由としては、やはり味との費用対効果が合わなかったのでしょう。名物に美味いものなしなのでしょうか。

なお、本稿を執筆する際に重要な文献資料が読み込めていないことを追記しておきます。伊谷樹一氏(京都大学)の「タンザニアにおけるタケの分布と利用」です。ウランジ作りと利用を中心に、タンザニアにおけるタケの利用と分布を紹介したものらしいです。また、『酒づくりの民族誌』(山本紀夫・吉田集而編著、八坂書房、1995年)にも作り方が詳しいようです。

【参考文献】
・アジア・アフリカにおけるヒトとタケ(リンク
・ダルエスサラーム便り(リンク
・PBO:NPO法人 プロフェッショナル・バーテンダーズ機構  タンザニアの酒(リンク
・タンザニア徒然草(リンク
・金丸文武 オンザロードアゲイン(リンク
・Get to know different spheres of life(リンク

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