産業

進化する竹バット。安かろう悪かろうは過去の姿か?

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みなさんこんにちは。日々竹・笹に関する情報発信を行っているBamboo Salonです。今回は「竹バット」という、硬式野球に主に用いる安価なバットについて紹介致します。

【そもそも竹バットとは】

竹バットとは、その名の通り竹でできたバットです。丁度いい太さの竹を削って作ったバットではなく、あくまで裁断(割った)された竹を組み合わせて、接着したバットですので、決して丸竹を削ったものではありません。

その特徴は、安い・丈夫・全然飛ばない+(手が痛くなる)という、要すれば「安かろう(公式戦には)悪かろう」というものでしたが、最近はどうやら進化しつつあります。

【竹バットの歴史】

そもそも、日本の野球の根底を支えてきたのはもともと合竹バットであります。具体的には、1974年に金属バットを導入される以前、多くの学生は合竹バットを用いていた可能性が高いです。もちろん、木製バットを使っていた可能性も考えられます。しかし、金銭的に厳しい事情を抱える高校生が折れやすい木製バットを使っていたとは考えにくいでしょう(木製バットの方が、合板の竹バットより折れやすい)。だから、多くの高校生が公式戦はともかく練習・ないし練習試合は合竹バットを使っていたということは想像に難くありません。

【竹バットの特徴】

少しおさらいも含みますが、竹バットには以下の特徴があります。

・バットの芯を外すと飛ばない
・金属バットより芯が狭く、技術的に扱いが難しい
・バットが振動を吸収してくれないので、芯を外すと猛烈に手が痛くなる(特に冬場)
・打球音が金属バットより静か。一方で打球感が悪い(爽快感が無い)
・金属バットと同じ重量のバットでもヘッドに重心がある為、若干重く感じる
・インパクトの瞬間が、金属より長く感じる(いわゆるバットにボールが“乗る”感覚)
・通常の木製の高級バットの1/3以下の価格を実現。メーカーによっては1本3,000円以下のものも存在
・折れにくい(複数の材から成り立つことと、接着剤で固めてあることと、振動・衝撃をバットが引き受けないことから)
・大学・プロでは合板で作られたバットの利用を禁止しているため、試合では使えない(少年野球や草野球では利用可能)
・合板の特性上、ヒビや板が多少剥がれてもビニールテープで補強すればまだまだ利用可能(当然打球感等は更に悪くなる)

 一番下の再利用可能という項目は、メーカーは絶対に書きません。折れたバットは利用するなということを書いてありますが、金のない学生はビニールテープでぐるぐるまきにして利用していることが多いでしょう。結局のところ、「安くて」「飛ばなくて」「試合に使えない」「練習用バット」というポジションなのである。

【竹バットの作り方と素材】

竹バットとは竹板を貼り合わせて角材をつくり、その角材をバットの形状に削って作られたものです。一般的な木製バットは角材から削り出しますが、竹の場合は合板で構成される合竹バットなので、芯材を中心に貼り付けます。想定される製造工程は以下になります。

・稈の中でも使える部分(おそらく枝葉以外のほとんどの部分)を切り出す
・獲得した部分を3センチ角程度に割る
・割った部分を長方形に特殊機械で整えて削り、長い棒状にする
(この際、割った材は重さによって仕分ける。なぜなら、重さが違うものを変な配置で張り合わせると重心に偏りが発生してバットとしては使いづらくなるため)
・圧力をかけつつ接着剤で張り合わせて太い長方形を作る(角柱。バット材とも)
・通常のバット同様にバット形状に削る(機械による作業)
・塗装をする

咥えて、どこかの工程で防腐処理等が行われます。

そして素材についてですが、前述の通り日本国内で合竹バットが主流だった時代はマダケやモウソウチクを主な素材としていた可能性は高いでしょう。金属バットが主流になったのは1970年代以降のため、1966年のマダケ一斉開花の時期から鑑みるに、おそらく過去はマダケを使うことが主流だったのではないかと考察もできます。一方で、現在の主流は中国産バットあるいは中国産素材を用いたバットが大多数を占めることを考えると、おそらくモウソウチクかと想像できます。

国産のモウソウチクを使わない理由としては、やはりコストがその主因でしょう。中国から材を輸入する方が低コスト(日本だと伐採及び輸送コストが相当かかる)ためです。ややもすると、放置竹林あるいはそれに準ずるところから切り出すよりも、中国産の方が質に勝かもしれません。なお、事実鹿児島の竹業者は今でもモウソウチクを原料として竹バットを製作してます。

また、遠く異国の地ドミニカでも竹バットは流通しています。バットのために竹を輸入していると考えるよりは、現地の竹を使っていると考える方が、彼らの物価を考えると自然かもしれません。その場合は、温帯性の竹(モウソウチク、マダケ等)ではなく、所謂”バンブー”が原材料となります。

つまるところ、入手性などから時代・地域によって竹バットの原材料は異なります。そしてそれは、板にしやすく、しなり、そして折れにくいという特徴はどの竹でもある程度共通する性質であるため、そこまで材質にはこだわってはいないことの裏返しかもしれません。なにせ、安かろう悪かろう強かろうという目的のためのバットなのですから。

【最近の竹バット】

しかし一方で、最近は竹バットでも高級路線を歩むバットが出現しているようです。

例えば、「炭化竹バット」というものは、加圧加熱処理した炭化竹を使用することで、素材の硬化とメイプルのような打感を実現し、手のひらへの衝撃まで抑えることができます。であれば、打感の悪さ・手の痛み・飛距離の少なさという竹バットの欠点を全て解消できるかもしれません。

また、「竹合板バット」というものもあり、これは竹以外の素材も組み込んで打球感や強度を上げた、というものです。ヒッコリーやメイプルなどは、通常は一本木(=削り出し)のバットのみに使われますが、その端材を組み合わせることで、資源の有効利用と打感の向上が実現するということです。

更に、「グラスファイバー竹バット」というものもあります。これは一般的な竹バットと異なり、一番折れやすいグリップ部をグラスファイバー素材でカバーしており、より折れにくい構造になっているというもの。グリップから打球面までグラスファイバー巻きで補強することで、そのような仕様になっています。一方で、竹バットは既に十分すぎるほどの強度をもつため、コストをかけてこれ以上強度を上げる必要があるのでしょうか。

なお、実は竹バットよりも折れにくいバットとして、各メーカーが発表している鉄芯に木材を巻き付けたバット、所謂「コンポジット」というものがあります。はっきり言って、竹バットとは比べ物にならない耐久性を誇ります。値段は一万円を超えてくるものがほとんどですが、竹バットが一本4000円で、月に一本折れてしまうとしても十分コスト的にはコンポジットでペイします。しかも、コンポジットの方が圧倒的に打球感も良いのです。なので、最近は練習では竹バットよりも、専らこのコンポジットが使われています。

そしてそうなった時に、竹バットのポジションはどうなるのか。コンポジットよりも竹バットが勝る点はただ一つ、加工性になります。

コンポジットのバットは万人向けの形にしか加工できない一方で、竹バットはオーダーメイドで形を指定できます。実はバットの形というのは千差万別であり、選手独自のこだわりがあったりするものです。なので、そういうところで勝負するか、あるいはより安い値段(例えば、一本2000円等)で提供するしかありません。なかなか厳しい勝負に追い込まれている、という現状です。

【参考文献】
東スポWEB
https://www.tokyo-sports.co.jp/sports/baseball/151781/
Ball Park.com
http://www.japan-ballpark.com/whybanboo.html
http://www.japan-ballpark.com/blog/baseball-knowledge/how-to-choose/3754.html
http://www.japan-ballpark.com/blog/bat/bamboo/487.html

中小企業ルネサンス 株式会社ロンウッド
http://www.tonio.or.jp/joho/tonionews/renaissance/bn33.html

中部経済産業局
http://www.chubu.meti.go.jp/b31technology/kirari/16/index2.html

「日々徒然」ブログ
https://blog.goo.ne.jp/ex1919/c/f6a1dce746cc26a5e62a9baf3dc9822f/6

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