生態

パンダと竹:パンダは仕方なく、しかし効率よく竹を食べている

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パンダ

みなさんこんにちは。日々竹・笹に関する情報発信を行っているBamboo Salonです。今回は「パンダと竹」の関係についてご説明します。

【パンダと竹のイメージ】

竹に関する研究や事業を行っていると、「竹……ああ、パンダが食べているやつ」ということを言われることが多いでしょう。実際のところ、「パンダ→竹」という連想には妥当性があり、野生のパンダは間違いなくその主食を竹としています。テレビなどで再三そのイメージが植え付けられると、気づけば「竹→パンダ」という逆のイメージも浸透してしまう、というのもある程度納得感があります。

【なぜ竹を食べているのか】

述べたように、野生のパンダは竹を主食としています。その理由には諸説ありますが、有力なものは「競合とバッティングしないため」という考え方です。古代の人類の人口が増えるにつれ、パンダが高緯度地域に追いやられたためという説もあります。いずれにせよ、棲みついたその土地で、ツキノワグマなどほかの肉食動物と獲物を争わなくてすむよう竹食に適応したという考え方が広く膾炙されています。バッティングしない中では、年間通じて存在し、また成長も早いタケを主食にするという戦略は納得感があります。なお、それでも栄養が足りないのか、ご存じの通りパンダの動きは常に緩慢で、エネルギーを無駄にしない生活スタイルを採用しています。

パンダは雑食性のため、別段竹をマストで食べる必要があるかと言えば、そんなこともありません。給餌されれば肉も食べますし、上野動物園ではトウモロコシ粉を蒸かして作った団子やミルクがゆ、リンゴ・カキなどの果実、サツマイモ、ニンジンなどもタケの補助食として与えていました。野生では、タケノコや若芽、ときにはは虫類などの小動物を捕まえて食べたという記録もあるようです。実際、雌のパンダは妊娠をするとお腹の中の赤ちゃんに栄養を与えるために、栄養豊富な餌を探して食べるようになることもあります。

より生物学的な話をすれば、食肉目クマ科に分類され雑食性であるパンダは生物の系統樹の上で大半の草食動物とは異なる枝の上に位置します。そのためまず腸の長さが体長の約4倍と草食動物と比較して短く(ウシ・ヒツジなどの草食動物は20~25倍)、肉食動物の身体的特徴を備えています。加えて、食物を分解する腸内細菌も草食動物のものよりは草食に特化しておらず、植物を構成する糖鎖であるセルロースなどを分解して栄養源とする能力も限定的です。

しかし、中国山岳地帯の奥地を生息の場としたパンダは、そこで冬でも枯れず1年を通し豊富に得ることが出来る食物であるタケ(ササ)を自然界では食べざるを得ませんでした。そのため、消化効率の悪い竹をせっせと1日あたり12時間以上かけて、10 kg以上(10時間で20 kgという考え方もあります。乾燥重量9~14 kgというのが一般的)のタケやササを食べエネルギーを獲得します。この大量の餌から2割をエネルギーとしてようやく生活できるのです。そのため、繊維の部分は消化出来ずにそのまま糞となって出てしまい、その量は食べたタケのおよそ80%になります。

【どのようにして栄養を摂取しているのか】

まず入り口として、肉食動物ならではの強力なあごでかみつぶし、タケを口に運ぶことはできます。ここまでは、工夫次第では他の動物(例えば、人間なら粉砕機を使うなど)でも真似はできます。しかし、これを栄養に変える作業は難しいです。なお、草食動物ではここの段階で離脱するので、竹の稈を栄養として取り入れられるのは世界中でパンダぐらいしかいない、ということになります。

最近の研究では、セルロースではなく、むしろその中に含まれるデンプンなど(ヘミ繊維素、ペクチンなども含む)からエネルギーを得ていることが明らかになっています。実際、その他の木本植物と比べると竹に含まれるデンプンはやや高く、パンダはデンプンが最も多く含まれている部分を好んで食べているようです。そのため、研究では筍が生える季節はデンプンとヘミ繊維素が最も多い筍を食べ、逆に筍のない冬場などは竹に含まれるデンプンと可溶性糖の量が最も高くなるため、それを食べるそうです。

なお、パンダは進化の過程でセルロースを分解する能力も一応は獲得しています。そもそも2009年にジャイアントパンダのゲノムが解析された際には、セルロースの分解に働く既知の酵素に対応する遺伝子がないことが明らかになっていました。しかし、実際に野生のパンダ7頭と飼育されているパンダ8頭の糞に含まれる遺伝子を調査対象にしたところ、パンダの消化管内に、草食動物の腸内で見つかるものに似た細菌が実際に存在したそうです(発見したもののうち、13種は既に知られているセルロース分解細菌の仲間で、7種はパンダに特有の細菌)。

【まとめ】

パンダは競合を避ける形で竹食を余儀なくされました。しかしその中でもデンプンを積極的に摂取できるように工夫をし、更に進化の過程でセルロースを分解できる能力を身に着けましたが、主な栄養源はやはりデンプンです。また、余儀なく竹を食べているので、本来的にはより栄養効率の良い食物を求めています。

【参考文献】
・パンダが竹を食べる謎を解明(リンク
・パンダが竹を食べるのはなぜ?長年の謎がついに解明(リンク
・パンダが一日中、大量の笹や竹を食べている理由とは?/毎日雑学(リンク
・パンダの体型、竹だけ食べてる割に太すぎるだろ問題(リンク
・パンダ大百科(リンク

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