生態

竹の開花周期の多様性に関して:同じ種でもいろいろな周期

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【はじめに:種毎の多様性】

竹の開花というとどういうイメージを持つでしょうか? 60年、120年周期で一回咲くという話や、どこかで竹の花が咲いたといったニュースを聞いたことがある方もいらっしゃることかとおもいます。


でも実は竹笹の開花のスタイルというのは実に多様です。竹は、温帯性竹類、汎熱帯性竹類、草本性竹類の3群に大きく分類されます(Kelchner & BPG, 2013)。草本性竹類は毎年開花します。一方で、温帯性竹類、汎熱帯性竹類の開花は滅多に起こらないことが知られています(Guo et al., 2019)。草本性の竹に関しては日本では身近ではないですし、また別途紹介したいとおもいますが、毎年咲く竹も在るのか?と驚かれる方も多いかとおもいます。

【本題:同一種内の多様性(モウソウチク、ハチク)】


今回は身近なモウソウチクやハチクといった温帯性竹類の中でも開花の様式に多様性があることを紹介したいとおもいます。


現在日本で最も広く分布しているモウソウチクでは、1912年に播種したモウソウチクが1979年に開花したこと(Watanabe et al., 1982)、1930年に播種したモウソウチクが1997年に開花したこと(Nagao & Ishikawa, 1998)が報告されており、67年の開花周期とも考えられています。一方で、遺伝子型の違いにより開花周期が数年ずれることも報告されていますし(Isagi et al., 2004)、数百年咲いていないモウソウチクもあるわけで、開花周期ははっきりせず、そもそも周期があるのかどうかも明らかになっていません。


一方、近年ハチクが全国各地で咲いています。ハチクというとモウソウチクと同じマダケ属で姿形も比較的似ているようにも思えます。国内の過去の文献の調査からハチクは120年周期の開花と考えられています。

同じ温帯性の竹でもモウソウチクとハチクでは、開花周期が異なります。更に様々な点で驚くほどモウソウチクとハチクは異なっています。例えばモウソウチクは部分開花(竹林内で一部の稈でのみの開花)が主である一方で、ハチクは一斉開花(竹林で花が一斉に咲いて竹林ごと枯れてしまう)が起こることが知られています。モウソウチクは結実し発芽もしますが(Watanabe et al.,1982)、一方でハチクは花が咲いても種がほとんどできません。120年に一度だけ花が咲いて枯れて、でも種ができないとはどういうことでしょうか?なんとハチクは枯れてから再生竹という竹が再び地下茎から生じてきて再生していきます。一体ハチクの開花にはどんな意味があるのでしょうか? 不思議ですね。


竹の開花は大変興味深いです。いったいどうしてそんなに開花周期が長いのか等開花メカニズムがとても気になるところですが、これが全然わかっていません。今後の研究が楽しみです。
最近竹の開花の周期等関してまとめた文献が出ています(Zheng et al.,2020)。興味のあるかたは是非ご覧ください。

【参考文献】
Guo, Z. H., Ma, P. F., Yang, G. Q., Hu, J. Y., Liu, Y. L., Xia, E. H., … Li, D. Z. (2019). Genome Sequences Provide Insights into the Reticulate Origin and Unique Traits of Woody Bamboos. Molecular Plant, 12(10), 1353–1365. https://doi.org/10.1016/j.molp.2019.05.009

Isagi, Y., Shimada, K., Kushima, H., Tanaka, N., Nagao, A., Ishikawa, T., Watanabe, S. (2004). Clonal structure and flowering traits of a bamboo [Phyllostachys pubescens (Mazel) Ohwi] stand grown from a simultaneous flowering as revealed by AFLP analysis. Molecular Ecology, 13(7), 2017–2021. https://doi.org/10.1111/j.1365-294X.2004.02197.x

Kelchner, S. A. (2013). Higher level phylogenetic relationships within the bamboos (Poaceae: Bambusoideae) based on five plastid markers. Molecular Phylogenetics and Evolution, 67(2), 404–413. https://doi.org/10.1016/j.ympev.2013.02.005

Nagao, A., Ishikawa, T. (1998). Simultaneous flowering of Phyllostachys pubescens grown from seeds at Forestry and Forest Products Research Institute (in Japanese). For Pests 47, 11–14

Watanabe, M., Ueda, K., Manabe, I., Akai, T. (1982). Flowering, Seeding, Germination, and Flowering Periodicity of Phyllostachys pubescens. J. Japanese For. Soc. 64, 107–111. Retrieved from https://ci.nii.ac.jp/naid/10024284122/

Zheng, X., Lin, S., Fu, H., Wan, Y., & Ding, Y. (2020). The Bamboo Flowering Cycle Sheds Light on Flowering Diversity. Frontiers in Plant Science, 11(April), 1–14. https://doi.org/10.3389/fpls.2020.00381

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