竹サロン開催記録

第20回竹サロン情報交換会

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情報交換会活動報告

第20回竹サロンを実施したのでその様子を報告します。

実施日時:2020年2月20日(木)16時~18時半
開催場所:京都大学 農学部 1階 177教室
参加者: 計14名

今回は、平日の中日に開催ということもあり学生が中心の会でした。
自己紹介では、参加者に①名前②何をしているか③思いついた竹冠の漢字④今日期待することを話していただきました。竹冠の漢字では、「筋」「籐」「築」等、選んだ人のセンスがわかりやすい個性豊かな漢字が出されました。

話題提供
★「竹で世界は救えるのか?」
・桐畑 杏香ら(京都外国語大学 SUWIMMI)
≫ビジネスを通じて世界をより良くすることを目的とした学生ビジネスコンテスト「ハルトプライズ」の世界大会に進む京都外国語大学1回生チームの皆さんに、竹を活用した活動案を発表していただきました。ビジネスプランは、国内外で課題のある竹を竹炭として活用して、主に途上国地域における収入向上や水質改善の向上、農業用改良剤の普及に取り組むというものでした。彼女たちのアイディアが形となり、地域住民のために地域の自然資源を活用していくというビジネスが動きだす日が楽しみです。SUWIMMIの皆さんの活躍に期待しています。

★「竹を活用したビジネス案」
・岩田直彦 (京都伝統工芸大学校竹工芸専攻2年/竹工芸専攻チーム)
≫京都伝統工芸大学校の竹工芸専攻の経営学の授業で編み出されたビジネス案について紹介していただきました。竹工芸専攻では伐り出しから作品制作までの作業を実習を通じて学ぶことが出来るので、それを活用して竹産業の川上から川下までを包括したビジネスを構想していると伺いました。更に、竹工芸の体験指導も視野に入れており幅の広い活動の展開も検討されていました。また、伝統工芸大学校の他専攻のメンバーと共同して同胞チームとしてのブランド化についても話があがりました。竹産業界で伐り子が減っていることに伴い原竹供給量が少なくなっている昨今、竹産業を包括的に営むことが可能なビジネスの基盤を整えることは伝統産業後継のためにも意義のあることだと思います。今後の、日本文化を維持していくためにも是非とも実現に目指していただきたいです。

★「中国の竹海」
・孫鵬程(京都大学大学院農学研究科 博士課程)
≫中国の竹海について紹介していただきました。竹海とは、竹(主にモウソウチク)が広大に広がっている山岳地域のことです。中国には約10か所の竹海があるそうです。竹海は、巨大な自然公園のように維持されて、地元住民の観光地になっているそうです。発表では、四川省の蜀南竹海、江蘇省の宜興竹海、南山竹海の写真を見せていただきました。連なる山々が全て竹林で覆われており、ロープウェイや遊歩道が整備されて、とても壮観な景色が広がっていました。日本とは異なる広大な竹林の姿に大陸の雄大さを感じました。

★「Isoprene emission from bamboo species竹類におけるイソプレン放出」
・張庭維(京都大学大学院農学研究科 博士課程)
≫イソプレンは自然発生する物質ですが、産業的に放出されることも報告されており、大気汚染の一因とも考えられています。竹が放出するイソプレンについて、その放出量と温度及び光の強さの関係を調べた研究について紹介していただきました。台湾にある管理のない竹林で、竹の葉に計測器を設置し、月ごとに放出量と温度、光の関係について計測したところ、光と放出量に関する相関関係はあまり見られませんでした。しかし、22度から27度程度の温度範囲においては温度の上昇がイソプレン放出量の上昇にも関係しているという傾向が得られているそうです。現在は、京都市北部の試験地にて異なる種類の竹笹のイソプレン放出量の調査も進めているそうです。これまでのところ、種によってイソプレン放出特性は異なっており、特に下層に群生するササ類の放出量は少ないことが推測されました。竹がどのていどイソプレンを放出するのか、特に人為的に植えられた竹がどのような条件下でイソプレンをどのように放出するのかは、環境問題を定量的に検討するうえで重要な研究だと思います。今後もデータの蓄積を続けていってほしいです。

★「放置竹林で竹が成長していない?~野生動物を調べてみた~」
・小林慧人(京都大学大学院農学研究科 博士課程)
≫あまり成長できていない放置竹林の中に赤外線カメラを設置して野生動物の行動を時期別に調査した結果を報告していただきました。主にイノシシやシカが確認されたそうです。3から5月によく確認され、カメラの映像からは、イノシシが地上に出る前の筍を掘って食べる様子などが確認されました。国内で管理放棄された竹林は数多くありますが、これらの竹林が野生動物にとっての新たなハビタットになっているのかもしれませんね。

★「竹材に関する報道変化」
・笹原千佳(京都大学大学院地球環境学舎 博士課程)
≫「国民によってどのように竹材がとらえられているのか?」を調べるために、日本の報道機関がどのように竹材を報道してきたのかを調査した結果を報告しました。今回は戦前からデータベースのある国内大手2社の新聞の報道から「竹材」というキーワードのある記事を抽出し、その発行年と内容を分析した結果を報告しました。結果として、戦前は産業に関する記事が多く、戦時中から80年代頃までは竹製品、90年代は竹炭、2000年代前半は放置竹林課題と整備、2000年代後半から2010年ころまでは整備中心とはいえ竹材関連の報道が少なくなり、2010年以降は竹製品、伝統、環境にかんする記事が増加してくるという傾向が見られました。大手新聞社の報道は、直接国民の目に触れるものであり、国民の意識や認識も報道によって植え付けられるものがあると考えられます。2000年頃の放置竹林課題中心の報道では「竹=厄介者」という記載も見られましたが、近年は竹材に対する報道イメージが「環境に良い」「伝統的」等というポジティブなものに変化してきたようです。世間的に竹を前向きに捉える風潮が強くなってきているのかもしれません。

第20回の竹サロンを終えて・・・
竹を活用した生活改善、竹に関するビジネスプラン、雄大な中国の竹海…等、竹に関する前向きな取り組みや幅広い視野を養うことが出来ました。世間の動向としても竹を有用な文化的資源と捉える流れがある昨今、放置竹林を邪魔者だと声を荒げるのみでなく、人の管理がなくなった放置竹林を活用しようという動きが増えているようです。その一方で、放置竹林と呼ばれている竹林は既に野生動物によって生息地として活用されているという見方も出来るのかもしれません。いつの時代も、竹は元々生えていた場所や植えられた場所でどっしりと生きているだけなのだと思うので、竹から見たら人間はころころと世を変えるせわしない生き物なのかもしれません。

文責:笹原

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