第13回竹サロンを実施したのでその様子を報告します。
実施日時:2019年6月10日(金)10時30分~12時
開催場所:京都大学 農学部総合館 1階 S177
参加者: 計14名
蒔田明史「ササの一斉開花枯死・更新過程からタケの進化を考える~クローン成長と開花習性に着目して~」(秋田県立大学生物資源科学部)タケササ類の生態に関する大家の一人である蒔田先生から、ご自身の研究史を軸に、ササの更新過程に関する研究の発展とその示唆について発表していただきました。ご自身の大学院生時代にたまたまササの開花が起こったことをきっかけに様々な研究を重ねてこられ、近年では熱帯のタケの生態を視察した経験から、さらなる研究の展開も展望していらっしゃることを教えていただきました。
せっかく作ったプロットが食害にあってしまったことや、開花・枯死後の回復が予想外に遅かったこと、年に一度しかデータを取れないため、どうしても研究に時間がかかってしまうことなど、様々な困難を乗り越えながらも、様々なタケササ類の開花にめぐり合ったことや、最初に比較分析対象としたチシマザサとイブキザサが偶然違った生態学的特徴をもっていたことといった幸運にも恵まれて研究を進めてこられたそうです。そのようにして作図され、今回見せていただいたグラフや図は、どれもクリアかつ興味深いものでした。
発表後の討論も非常に充実したもので、タケササの開花枯死更新の研究を進める上で、とても貴重な機会になったのではないかと思います。
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第13回竹研究会を終えて。
今回はいつもと違って平日の昼間の開催で、京都大学の森林系メーリングリストで周知したこともあり、多くの初参加の方に来ていただきました。
タケササ類にはさまざまな面白い特徴があり、いつもは竹それ自体に関心を持つ方々に多く参加していただいていますが、今回は生態学関係者が多く参加して下さり、蒔田先生の発表の内容、その後の討論とも、生態学から見たタケササ類の面白さについて、あらためて感じる機会となりました。竹類と人間とのかかわりの幅広さ・奥深さは計り知れないですね。
今回の研究会でもう一つ印象に残ったのは、タケササ類の開花・更新の周期はきわめて長いために、タケササ類の生態を研究し、業績を挙げながら理解を深めていくためには、息の長い研究が不可欠だということです。息長く研究を続けてこられた先生たちの足跡を確認しながら、今は若い私たちも未来に続く道を切り開いていければいいなと感じました。
文責:峰尾恵人