第11回竹サロンを実施したのでその様子を報告します。
実施日時:2019年4月23日(火)15時~18時
開催場所:京都大学 農学部総合館 1階 S177教室
参加者: 計9名
岡本透「2017年スズタケ一斉開花とササの一斉開花周期」(森林総合研究所)竹・笹の実が着目されていた歴史を古文書からの引用を含めて解説して頂き、実際に2017年に開花をしたスズタケの写真も紹介して頂きました。日本では、竹・笹の実が飢饉時の食料になると古文書や絵に描かれていたことに先人の知恵を感じました。それと同時に、岡本さんが古文書や郷土史を調べるために各地の資料館や施設へ出向いて大量の資料を収集されているということに驚かされました。開高健のパニックという小説を読んだことがあったので、それの元になった1965年のササ一斉開花の新聞記事を紹介して頂けたことで何故あのような小説が、一小説家によって発表されたのかが腑に落ちた気がしました。「笹の実」と「ネズミ」というキーワードにはこれからも期待です。
丹羽峻也「バイサルファイトシーケンシングによるスズタケの120年開花機構の解析」(京都大学大学院修士課程)
スズタケの開花を抑制する因子を調べることを目的としてDNAを調べた研究を発表して頂きました。一般的にDNAのメチル化が多く見られるとその遺伝領域の発現が抑制されることがわかっており、この現象が開花を抑制している遺伝領域で発生することで開花が誘導されると考えられます。実際に開花したスズタケの根と葉のサンプルを調べたところ、開花後の種子から発芽した実生と比較してDNAメチル化が顕著にみられたという結果が出されたそうです。まだ、新規発生した実生の成長に伴うDNAメチル化の変異を調べることは今後の課題のようなので、どのようにメチル化が引き起こされるのか解明されるとスズタケ開花のメカニズムが理解できると思うので楽しみです。自由に笹を開花させられるなら私は笹の実を食べてみたいです。
小林慧人「タケ・ササの開花情報の収集について」(京都大学大学院農学研究科 博士課程)
竹の開花情報について収集しているツールの紹介と、最近話題になっているキンメイチクの開花の話題に花が咲きました。途中で、参加者の渡辺先生の写真もプロジェクターで拝見させて頂き、当日に撮影された竹の花を見ることも出来ました。最近はSNS上で竹の花の開花情報もよく発信されていますが天狗巣病に感染した竹を開花と勘違いして発信されている方も多いのでネットからの情報で真相を知るには注意が必要なようです。「日本人に竹の花を集める文化を根付かせたい」という小林君の熱い想いが感じられました。
************第11回研究会を終えて。最近、足元を見る機会は筍を探すことがメインになりつつありましたが、今回はササの開花について深く多角的に視野を広げることが出来たので、これからはササを見るためにも下を向いて歩こうと思いました。古文書から調べる過去の情報や、DNA情報を読み解く研究は異なるようで不思議な開花のメカニズムの解明のために重要な異なるアプローチであるというのが面白かったです。今後の研究にも活用できそうでワクワクしています。
(文責:笹原千佳)