生態

スズタケの実生報告~小川試験地スズタケ開花地にて~

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スズタケ

昨日、研修中の森林総合研究所のお手伝いで
小川試験地へ行ってきました。

(試験地の様子)

小川山は、茨城県と福島県の県境に位置する山でクライミングの聖地としても有名です。

標高500m程度で、太平洋側の冷温帯林であるこの試験地は、古くは人が森を利用していた二次林で、落葉広葉樹であるブナやイヌブナが目立ちます。

その林床には3種類のササが繁茂しています。

まず、スズタケ

稈が皮に覆われて直立しているのが特徴です。小川のササ類では最も背が高く1.5~6mまで伸びています。

次に、アズマザサ

写真は新稈なので分かりにくいですが、稈が低い位置で分枝するのが特徴です。小川試験地ではスズタケよりは低い高さで繁茂しています。

最後に、ミヤコザサ

稈からの分枝がなく地表面近くで葉を発生させるのが特徴です。葉がつくまでの稈は5~6節程度で直線状ではなく節ごとに歪んでいます。小川試験地では最も下層に位置するササです。

この3種類のササはどれも小川試験地に自生しているササですが、森というダイナミック系の中における作用や人間活動の頻度などによって常に遷移し続けています。

これまでの記録によると、1987年に小川試験地が設置された当初、ササの生い茂っている林床はアザマザサが大半を占めていたそうです。
しかしその後、徐々にスズタケの群落が規模を拡大しながらアズマザサ群落に覆いかぶさってきているという報告があり、現在は稈高の高いスズタケ群落が繁茂している様子が伺えました。。

また、スズタケの勢力はそれだけに留まらず、現在は87年時点ではササの生育の見られなかった林床までスズタケ群落を拡大させ下層植生を一層するパッチも形成しています。

一方で、ミヤコザサは稈高が低く87年時点から大きな群落を形成することもなく、試験地設置当初から小規模パッチを形成しているのみでした。現在も小規模パッチは残存しているものの、スズタケに被圧され、その規模はより小さくなっています。

87年時点でスズタケ群落がアズマザサ群落よりも小規模であったことの一因として、それまでは地域住民がササの稈や葉を利用していたことや、資源獲得を目的として森林に侵入するために道づくりのためのササの除伐をしていたことが考えられます。
そのような人間活動があったからこそ、スズタケは群落を拡大することが出来ずにいたのかもしれません。

(試験地の周辺は人が暮らしていた様子も見受けられる二次林的景観が拡がっていました)

そのような人間活動が自然に与える影響も大きいと考えられる一方で
2017年、小川試験地のスズタケの一部の群落が一斉開花をしました。

全域ではないので、全てのスズタケが同一の地下茎で繋がっていたわけではないようです。

(沢を挟んで左は枯死したスズタケ、右は開花をしていないスズタケ)

その開花後1年が経過した調査地では、現在一斉枯死が起こり茶色の世界を見ることが出来ました。

また、去年の開花後に取得した種からの発芽率は実験室ベースでは他の樹木と比較して低いという結果が出ており、今後、スズタケがどのように回復してくるのかがわからない状態だったのですが・・・

(中央に細い実生が見えます!)

少なくとも昨日の時点では2×2mの調査プロット8か所内にて平均5本程度の実生を確認することが出来ました!

(調査の様子)

まだまだ、遅咲きの開花を見ることも出来たので、今後も実生が増えてくることを期待しています。

実生が成長する前に、スズタケ枯死地にどのような植生が蔓延ってくるのか、これまで被圧されていたアズマザサが拡大してくるのか・・・今後の経過が楽しみです!

今はまだまだ枯死笹のみで茶色の世界です・・・

(ささはら)

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